ウォーキングで学ぶ江戸時代の歩き方 -疲れにくい効率的な歩行術-②

江戸流ウォーキングを現代に取り入れる方法
着物に学ぶ美しい姿勢の応用
・小股で歩くことの利点については前節で触れましたが、この歩き方の魅力はそれだけにとどまりません。たとえば、着物を身にまとった際には裾が大きく乱れることなく、腰の回転も抑えられるため、着崩れを起こす心配がほとんどありません。これは、日常的に和装をしていた江戸時代の人々にとって極めて合理的で美しい歩行様式であったと考えられます。
さらに現代において洋服を着て歩く場合でも、この歩き方は大きな恩恵をもたらします。小股で歩くことで着地の衝撃が緩和され、足裏全体で地面を捉えるため、膝や腰への負担が軽減されます。その結果、関節や筋肉にかかるストレスが大幅に減り、長時間の移動でも疲れにくく、身体に優しい歩行が可能となります。つまり小股歩行は、和装にも洋装にも適応し、時代や衣服を超えて人の身体を守る合理的な歩き方として位置づけられるのです。
草鞋歩行をスニーカーに置き換える工夫
靴を履いて歩く場合、草鞋や足袋のように足の指を積極的に使う必要はほとんどありません。現代の靴は形状的に足全体を包み込むため、指先の動きを抑制し、指で地面をつかむ感覚を失わせてしまいます。これに対して草鞋は脱げやすい構造を持っているため、自然と足の指を動かし、地面をしっかりと捉えながら歩くことになります。その結果、足裏のアーチ、すなわち土踏まずが発達し、衝撃に強くしなやかな足が形成されるのです。
一方、現代の靴はデザイン上、かかとに向かって高くなる傾向があります。そのため歩行時には常に前方、つまりつま先側に荷重がかかり続け、身体全体が前進する際に不自然な力の流れを生み出します。こうした構造は関節や筋肉に余計な負担を与え、長期的には身体にとって望ましくない影響を及ぼしかねません。草鞋のように足指を活かす歩行と比べると、現代の靴は便利さと引き換えに、足本来の機能を制限し、衝撃吸収力や自然な動きを損なっていると言えるでしょう。
毎日のウォーキングに活かす江戸流テクニック
・毎日のウォーキングを習慣として続けていくためには、無理なくラクに歩けて、なおかつ健康的な歩き方を身につけることが欠かせません。若いころはダイエットや体型維持を目的に、カロリー消費の大きい歩き方を意識していた方も少なくないでしょう。大きな歩幅で速く歩くことで一時的な効果は得られますが、長期的に見れば身体への負担も増えやすくなります。
しかし、50歳を超える頃からは視点を変える必要があります。大切なのは「一生歩けるカラダづくり」であり、そのためには歩行そのものを楽しみながら続けられる工夫が求められます。ゆっくりとしたペースで、呼吸を整え、景色や季節の移ろいを感じながら歩くことで、心身ともにリフレッシュでき、習慣化もしやすくなります。無理のない歩き方は関節や筋肉への負担を軽減し、長い年月を通じて健康を支える基盤となるのです。つまり、ウォーキングは単なる運動ではなく、人生を豊かにする持続可能な習慣として位置づけることが重要だと言えるでしょう。
